ネコマニア

ねこ

「猫屋敷のねこ先生」と言えば、町内で知らない人がなく、道を尋ねられれば「ほら、あそこ」と教えてくれるくらいだった。目呂二の猫好きは「先祖代々親譲り」。おばあさんっ子だった目呂二は、子どもの頃は隠居所の祖母の膝元で「人の子も猫の子も区別なく」育った。生涯、猫を身近から離さず、戦時中軽井沢に疎開した時にすら猫がいたという。
目呂二の随筆を読むと、ただ可愛がるだけでなく、食事の世話や糞尿の始末、病気の看病からお産の見守り、喧嘩の仲裁までやっていたことがよくわかる。家には飼い猫がゴロゴロしているのに、余所で猫を見かけると「チョッチョッ」と呼んでみないと気が済まない。旅館や店で猫を飼っていれば、わざわざ頼んで抱かせてもらい、心付けをやる。猫好きなら理解できる行動ではある。しかし、時代を考えると、大の大人の男が世間の目を一切気にせずやるなら変人と言われても仕方があるまい。
『ねこの先生 河村目呂二』から