3月31日 (木)  [3349] 公美堂101

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 とりあえず三人でまだ生きていることに乾杯したあと、僕が芹沢くんにさっきの50人の話しをもう一度してくれと促した。芹沢くんが話しをするなんていうのは珍しいことで、元来彼は口数少なく、口重く、無口、寡黙、ダンマリだ。ただの無口というより大きな闇を抱えているようなタイプで、前にも言ったが情報を吸収するだけのブラックホールなのだ。暫くして芹沢くんの大きな闇から少しずつだが反物質が放出された。「頭の中の50人は皆それぞれ正しいような事を言っている」と酒を煽りながら、右手で頭のてっぺんの髪の毛をむしっては床に捨てた。「しかし、これだ! という自分をどこまでも引っ張ってゆくような強い一つがないんだ」と芹沢くんはゆっくり語った。