3月27日 (日)  [3345] 公美堂99

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 社会人でない芹沢くんは呑み屋に行く道すがら始終頭の毛をむしっていた。もう陽は沈みかけていて、空がオレンジからブルーのグラデーションに染まり、真上には深いブルーが広がっていた。芹沢くんのブルーファッションが天空からこぼれ落ちた天使のようだった。このぐらいの時間帯が何もかもを色鮮やかに見せ、空気は澄み切っていて心地良い。夕方の色合いの波長が人に安らぎを与えると言う。同時に夜の闇の欲望が月の明かりに目を覚ます。寝むたいが寝てみたいになる時間だ。街はそんな複雑な色の空気で賑わい始める。途中可愛い女の子が向こうからやってきた。芹沢くんは女の子に挨拶をしてまた毛を掻きむしった。「知っている子かい?」と聞いたら「いや」と答えた。