2月15日 (火)  [3305] 公美堂80

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 まずは思考を吐き出したくなる。何も考えなくなる。「考えても考えなくても一緒だよ」というような空気がこの部屋を満たしている。それはこの部屋の住人である芹沢くんの頭脳がそうだからだろう。芹沢くんが一見何でもなさそうで相当の変わり者であることは確かだ。芸術家やそれを目指す若者が変人奇人の類いであったり、それっぽい行動や言動をとるのはよくあることだ。しかし三年もかけて二十歳を言い続けるのはほとんど無意識に近い。本物のボケか生粋のアーティストだ。百吸い込んで一も出さない。万吸い込んでもたったの一も出さない。億吸い込んでも僅かな一さえ出さない。出さないしか出さない。ほとんどすべての人間は出す。初めて出さない人間に出会った、と思った、とたんその思いも吸われてしまった。この部屋はあらゆる思考を吸い取る女性器だ。