12月25日 (水)  [408] 弟

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大きな木を切るといって男がやってきた。
止めろ!と阻止したが、まさかりで威嚇してきた。
恐いはずなのに全然ひるまず大声で何度も止めろ!といった。
一悶着あったが、どうにかこうにか止めさせることが出来た。
しかし、この大きな木はこの町にとって邪魔、枯れ葉の苦情が多い、節が多いから材木にもならない。
とりあえず、掘り起こされてしまったが、僕が貰い受け、どこかに植え替えることに‥しかし、こんな大きな木を植える場所はなかった。
どこかに植えなければ‥
だが、今は大変忙しく、すぐにも展覧会のため南へ発たなければならない。
帰ってからでも植えるのは遅くないだろうと、木をそのままにして南に旅立った。
ところが、展覧会中に病いに倒れ入院することに‥
木の事がとても心配だ、どうしよう?
業者さんに聞いたが、ずいぶん後回しになるとのこと。
このままでは木が死んでしまい燃やされてしまう‥
ずいぶん遠くから弟が見舞いに来てくれた。
仕事で近くに来たらしい。
お互い忙しいし住んでいるところもかなり離れているので、会うのは十何年ぶり。
明日までゆっくりしていけるらしい。
いろいろ話したいこともたくさんある。
なんかとっても嬉しい‥子供の頃はとっても仲がよかったから‥
そこにこっちにいる知人も沢山やってきた。
ところで、ずう〜っと向こうの僕が住んでいるところに大きな木があって、それを今すぐにでも植えないと死んじゃうのだが‥と話したら、知人達は、こうするのはどうだ、ア〜するのはどうだ、と意見をたくさん出して帰っていった。
だが、どの意見も何の解決にもならなかった。
だれもいなくなった病室で、弟が「僕が植えに行くよ」といった。
えっ!今来たばっかりで、帰るのか?疲れているだろう?
行くのか?お互いゆっくり話したいのに‥お前だって忙しいだろう?ずいぶん遠いぞ。
「じゃあ、行くよ、兄貴、身体大事にな」
本当に、行くのか?
ほんとうに、ほんとうに、ありがとう。